アフリカの子どもたちに「はじめての映画」を届けたい!前編 cinema stars アフリカ星空映画館 代表 桜木奈央子

2016年夏にウガンダで移動映画館を実施されたフォトグラファーであり、アフリカ星空映画館cinema stars代表の桜木奈央子さんから感動の寄稿文が届きました!

 はじめまして。アフリカで移動映画館を実施する団体「cinema stars アフリカ星空映画館」代表の桜木奈央子と申します。ちょうど去年の今ごろ、ワールドシアタープロジェクト代表の教来石さんと出会い、それが移動映画館を始めるきっかけのひとつになりました。

おたがいの著書を交換しました

 私たちはこれからもアフリカ各地に移動映画館を広げていく予定です。その拠点であるウガンダで私が体験したことについて今回は書きたいと思います。

2016年8月 映画が見られるのは、平和だから

子どもたちの歓声に包まれて

 大きなスクリーンにアニメーションが映し出された瞬間、子どもたちから「わー!」と歓声があがりました。ウガンダ北部の町、グル。満月の夜、村の小学校の校庭で私たちは初めて映画を上映し「cinema stars アフリカ星空映画館」がスタートしました。

ポップコーンを食べながら、はじめての映画体験!

 「あの頃はこんな日が来るなんて想像できなかった」と、私とウガンダの友人は上映中のスクリーンの脇で(ひそひそ声で)語り合いました。彼の目には涙が光っていました。内戦中には、夜にこうしてたくさんの人が集まることは危険すぎて考えられないことでした。子どもたちが映画を見て笑い合う中、「ここに○○も一緒にいられたらよかったのにね」、とこの15年の間に亡くなった仲間の話をしました。長く続いた内戦で、たくさんの人が亡くなりました。

2004年 子どもたちを守る避難シェルターで

子ども兵士

 当時、ウガンダ北部は反政府ゲリラ軍の活動地域でした。ゲリラ軍は夜のあいだに村を襲撃して子どもを誘拐したくさんの「子ども兵士」を生み出しました。
 その方法は本当に残忍で、子どもの目の前で彼らの両親を痛めつけたり殺したりしたあと、村に火を放ち、すべてを燃やしたりもしました。私は、昨日まで「ふつうの生活」をしていた村が、翌朝丸焦げになったのを何度か目撃しました。村の大人は殺され、生き残った者は体や顔の一部を切り落とされ、子どもたちは消えました。
 当時私は大学生で、写真を撮るためにウガンダを年に数回訪れていました。ある時、丸焦げになった村で、丸焦げの赤ちゃんを見て泣いている母親に出会いました。私は写真を撮ることもできず、その夜、宿に戻ってから嘔吐しながら涙がボロボロこぼれたことを今でも覚えています。

避難シェルター「かぼちゃの下で」

 同時期に私は、子どもたちを守るための避難シェルターを建設するプロジェクトのコーディネーターをしていました。

ウガンダの友人たちとNGOを立ち上げ、日本のNGOから資金提供してもらい、子どもたちが夜間だけ避難する建物を建てました。その避難シェルターには、現地の言葉(アチョリ語)で「Te Okono(テ・オコノ)」という名前をつけました。日本語では「かぼちゃの下で」という意味です。アチョリ族の言い伝えで、かぼちゃ畑に茂った葉の下は隠れ場所に最適で「最後の隠れ場所」や「安全な場所」の象徴でした。

 毎晩、子どもたちが安全な寝場所を求めてやってきました。みんな裸足で、おなかをすかせたまま、長い距離を歩いてきました。赤ちゃんをおぶってくる6歳ぐらいの子もいました。多い時は毎晩200人ほどの子どもたちが夜をすごすために来ていました。

厳しい現実と悪夢

 子どもたちと一緒に夜をすごしてみて、彼らの様子がおかしいことにすぐに気がつきました。深夜に金切り声をあげて飛び起きる子、泣き叫びながら徘徊する子、木の棒を振り回して他人を威嚇する子…。寝不足で子どもたちの疲労もたまり、また親と離れた寂しさもあり、毎晩ピリピリした空気が漂っていました。

誘拐されたことがある少年

 子どもたちに話をきいてみると、半分ぐらいの子が「誘拐されたことがある」と答えました。中には「人を殺した」と苦しそうに語る少年もいました。子どもたちが置かれている状況は厳しく、終わりのない恐怖が悪夢を増長させていました。私たちスタッフは「とにかく、子どもたちを安心してぐっすり眠らせるにはどうしたらいいのか」を毎晩話し合いました。

たき火と映画館

 ある日あるスタッフが「たき火をしよう!」と提案してくれました。もともと彼らの文化では、たき火のまわりで長老の語りや演劇や音楽を楽しんだそうです。内戦が始まってからは夜に集まるのが危険になったのでできなくなったのですが、フェンスに囲まれたこの避難シェルターの庭なら大丈夫だろうとのこと。さっそく、その晩からみんなでたき火をしました。真っ暗な夜、満天の星空と子どもたちの目がキラキラ輝いていました。蛍が飛ぶ中、毎晩みんなでアチョリの昔話や劇をしたり、歌い踊りました。

 子どもたちはそのうち廃材から楽器を作りだし、演奏するようにもなりました。昔話や音楽を聞きながらひとつの明るい炎をみんなで見つめるのは、なんともいえないワクワク感と安心感があり、私はその時「なんだか映画館みたいだな」と思いました。となりの子の体温が触れている肩から伝わってきて、とても穏やかな気持ちになりました。いつゲリラ軍が襲ってくるかわからない緊張感が続く毎日で、私たちは安らぎを求めていたのかもしれません。

廃材になった机の引き出しで子どもたちが作った木琴

 ある夜、私のノートパソコンで「天空の城ラピュタ」の英語版DVDを子どもたちと見たことがありました。200人には小さすぎるスクリーンでしたが、彼らは夢中になって見ていました。翌朝、空を見て「あそこにラピュタが見える」と真剣に言い合う子どもたちもいました。

2014年 大人になった今でも、忘れられない

映画の力

 その夜から10年後。内戦も終わり、平和になったグルの町を歩いていると、ひとりの青年に話しかけられました。彼は8歳のころ避難シェルターに来ていて毎晩一緒にたき火のまわりで歌ったんだと言い、私の名前も覚えてくれていました。そして、こう言いました。「本当にひどい時期だったけど、みんなで映画を見たあの楽しい夜のことが大人になった今でも忘れられない」と。彼のその明るい笑顔を見て、つらい記憶の中に楽しい夜の記憶が残ったことを、心からうれしく思いました。映画ってすごい力を持っているんだな、と感じました。

2016年 満月の夜に

はじける笑顔

 冒頭の場面に戻ります。たくさんの方たちのおかげで、ウガンダでの上映会は大成功に終わりました。ワールドシアタープロジェクト様にはコンテンツ提供やアドバイスなど、さまざまな面でご協力いただき、心から感謝しています。おかげさまで約600人のアフリカの子どもたちに「はじめての映画」を届けることができました。

2016年度の報告用ムービー

 でも、子どもたちの笑顔の裏側にはまだ内戦の影が落ちていました。彼らの中には母親や父親が元子ども兵士でレイプの結果生まれてきた子もいて、家庭に複雑な事情を抱えています。「お父さんは誰かわからなくて、お母さんは精神的におかしくなって入院している」と語る子もいます。内戦の傷をどう癒していくかが今後の課題になりそうです。

2017年、夏 アフリカ星空映画館ツアー

 内戦を経験したこの地域の子どもたちに「はじめての映画」を届けたい、という思いで始まった「cinema stars アフリカ星空映画館」。内戦中に子どもたちが心を癒し、創造性を育んだ「たき火」のような場所づくりを目指して、今年も8月にウガンダに行ってきます。

 すでにすばらしいアニメーション作品の上映が決まっており、また日本・ウガンダの小学生たちとの共同プロジェクトも始まっています。両国の子どもたちはすでにビデオレターや手紙で交流をしています。
 そして今年は、希望者と一緒にウガンダに行く「ウガンダ星空映画館ツアー」を実施することになりました。すでに学生さんや社会人の方の参加が決定していますが、まだ若干名の募集があります。興味がある方はお気軽にご連絡ください。アフリカの星空の下での映画館体験は、きっと忘れられない思い出になるでしょう。

上映予定地の小学校の校長先生と生徒たち

ウガンダ星空映画館ツアー9日間

●スケジュール

8月1日(火)出発・8月9日(水)帰国(エミレーツ航空)

●内容

星空映画館会場のデザインや装飾、イベントの主催・運営、現地の小学校や村などで子どもたちと映像や絵画制作ワークショップ、日本の子どもたちとのスカイプを使った交流や作品制作、一般家庭での生活体験、アチョリ族の文化体験(ダンスなど)、ビクトリア湖畔でのオープニング&クロージングパーティ、大使館訪問など
*子どもたちと映画鑑賞したいだけの方も大歓迎

●費用

398,000円(参加者数により変更の可能性あり)
含まれるもの:航空券、宿泊費、現地での移動費、食費の一部など
含まれないもの:日本国内空港施設使用料(2,670円)、現地空港諸税(8,330円)、航空保険特別料金/燃油特別付加運賃(16,200円)、予防接種代、海外保険、食費の一部、ビザ代など

*ご希望の方には詳しい資料を送付します。contact@sakuraginaoko.comまでご連絡ください。
*参加締め切り6月14日まで

 次回の記事では、日本とアフリカの子どもたちの共同プロジェクトなど現地での詳しい活動について、また、ウガンダはもちろんのこと、カメルーン、ケニア、エリトリア、ナミビアなどアフリカのいろんな国でのこれからのプロジェクトについて書かせていただきます。

桜木奈央子プロフィール

フォトグラファー。2001年からウガンダを中心とするアフリカ各地に通い、取材を続ける。著書『かぼちゃの下で −ウガンダ 戦争を生きる子どもたち』(春風社)、『世界のともだち8 ケニア』(偕成社)。雑誌や新聞に写真やエッセイを発表、学校での講演会や授業も行う。高知県出身。