夢のまた夢

ワールドシアタープロジェクトは立ち上がり以来、
多くのメンバーによって少しずつ歩みを進めてまいりました。
それぞれの人生も思いもあるので、一生一緒にいることはできません。

活動初期から支え続け、理事を務めてきた上村もその一人です。
直接活動できることは少なくなりますが、
今後は外部アドバイザーとしてWTPを応援してくれる頼もしい存在になります。
WTP感謝祭2017で、ご支援者の皆様に語られたスピーチには、
メンバー一同目を潤ませました。

 

2017年をもって、World Theater Projectの理事を退任いたしました。
多くの皆様に、大変お世話になりました。
思い返すと、
出会ってきた方々とこの活動の夢を語り合った高揚感が蘇ってきます。

日々の活動への貢献からは、これまでよりも遠のいてしまいます。
それでも、これからもこの活動を応援していく気持ちは変わりません。
「応援の第二ステージ」として何ができるか、今後も模索して参ります。

その行動の一つという意志も込めて、
任期を通して抱いた想いを綴らせていただきます。

 

 

 

この活動に出会ったのは、
立ち上げからまだ間もない、2013年5月でした。

あの時、
カンボジアで正式に上映できる作品は、まだ一つもありませんでした。
上映機材もない。
知名度もイベント開催経験もない。
印鑑もなければ銀行口座もない。

あれから4年半が経ち、現状を見て強く思います。

「夢のまた夢」は、こんなにも叶うものなのか。

もうすぐ5万人の子どもたちに映画を届けられるということ。
もっと遠くの夢だと思っていました。

カンボジア人自身が映画配達人として活躍してくれること。
World Theater Projectモデルの寄付型自動販売機ができるということ。
そしてまさか、
斎藤工さんたちとクレイアニメ『映画の妖精 フィルとムー』を作れるということ。

どれも、当時夢見ることさえできていなかった「夢のまた夢」です。
だけど、その「夢のまた夢」は、こうして一つずつ現実になっています。

今回のクラウドファンディングでご支援くださった皆様のおかげであり、
そして、これまで応援し続けてきてくださった多くの方々のおかげです。
本当にありがとうございました。

 

 

 

この活動は最初、大きな不安の中で始まりました。

僕らの自己満足に過ぎないのではないか。
カンボジアの方々への、押し付けがましいものになっていないか。

そんな僕らを後押ししてくれたのが、
カンボジアのバッタンバン州で映画配達人のリーダーを担ってくれている、
エン・サロンさんです。

カンボジアの方たち自身がこの活動に意義を感じ、
「映画を受け取る側」を超えて、「映画を届ける側」になってくれた。
このことは、僕らが進み続ける大きな勇気になりました。

そしてサロンさんは、僕らに「夢への歩み方」を教えてくれた人でもあります。

彼は、右の手足にハンディキャップを抱えています。
かつて、

「手足の悪いお前は、タイに行って物乞いになればいい」

と言われたこともあるそうです。
生きることが辛くなるほど、深刻に思い詰めた時期もあった。
そう語っていました。

それでも彼は立ち上がり、英語を一生懸命勉強して、
トゥクトゥクドライバーになり、今では家族も養っています。
そんな彼は、映画配達人を引き受けてまだ間もない頃、
こんなことを言ってくれました。

「このプロジェクトは、子どもたちに夢を与える素晴らしいアイデアだ。
この仕事をくれてありがとう。」

サロンさんの家にホームステイをさせてもらったことがあります。
その夜、彼が語ってくれた言葉が今でも忘れられません。

僕には夢がある。
都会にはない静けさを提供するゲストハウスを開きたい。
だけど周りの人たちは、
「ハンディキャップがあるお前には無理だ」
と言う。

でも、僕はそうは思わない。

確かにお金もないし、簡単なことではない。
5年経っても叶わないかもしれない。
10年経っても叶わないかもしれない。
20年経っても叶わないかもしれない。 

それでも僕は、夢を見続ける。

夢を叶えるために、大事なことが二つある。
まずは何よりも、夢を見ることだ。
そして、“step by step
1歩ずつ進んで行くことだ。 

他の人なら1回で運べるものでも、僕には同じことはできない。
だけど、10回に分けて運べば、僕にもできる。 

まずは何よりも、夢を見ること。
そして、10回に分けてもいい。
step by step
一歩ずつ進んで行くんだ。

 

 

 

World Theater Projectも、今日まで“step by step”で進んできました。
これからもきっと、そうして進んでいきます。
その一つずつの“step”は、活動メンバーだけでは歩んでいけません。
応援してくださる皆様と一緒だからこそ、踏み出していけます。

僕が尊敬している人が語っている、こんな言葉があります。

「仲間たちと作る現実は、一人が描ける理想を超えていく」

普通、理想は現実よりも、立派で大きなものです。
だけど、仲間が集まって力を合わせて作り上げる現実は、
“所詮”一人の人間が夢見ることができる範囲の理想を、
超えていくことがある。

夢なら一人でも見ることができます。
だけど、「夢のまた夢」は、仲間が集まるからこそ生まれます。

これから先、もっと大きな「夢のまた夢」が待っているはずです。
今見えている範囲の理想を超えて。
それを現実にしていくためにも、
多くの方々の応援がこれからも必要になってきます。

かつて、移動映画館を行うためには、
毎回メンバーが渡航しなければならない時代がありました。
物価の安いカンボジアにあってさえ、
子ども一人に映画を届けるために数千円かかっていました。
すべてメンバーの持ち出しで活動していた時代です。

今ではカンボジア人自身が映画配達人として日々飛び回ってくれるようになり、
一人あたり100円で映画が届くようになりました。
日本で一回映画館に行く1,800円で、
18倍の人数、18人の子どもたちに映画が届きます。
昔よりもずっと、少しずつの応援でも、
大きな力に変えられるようになってきました。
集まった資金やパワーを、社会を変えていくために何倍にも増やして送る。
そんなテコのような存在になれつつあります。

クラウドファンディングによって、
夢のようなクレイアニメ『映画の妖精 フィルとムー』が生まれ、
世界中に届けられる映画がまた一つ増えました。

これらの映画を「日々」世界中に届けていくためには、
今度はこの「日々」の活動を止めず、活性化していく必要があります。
それはクラウドファンディングのように目立つことではなく、
誰の目にもつかない、地味な活動であることがほとんどです。
地味でも、NPOの活動にとって本当に大事な部分です。

もっとたくさんの子どもたちに映画を届け続けていくためにも、
ギフトシネマ会員をはじめとした様々な方法で、
これからもWorld Theater Projectに力を貸していただけると幸いです。

 

 

 

最後になります。

「映画を届ける」ということは、
世界にたくさんの「かもしれない」を生み出すこと。

この活動を続けてきて思うことです。

映画体験で知った夢を、その子が将来実際に叶えていく、という光景。
それは時に、綺麗事・理想論のように聞こえてしまうこともあります。

それでも、スクリーンを見つめる子どもたちの表情を見ると思うのです。

たとえ「かもしれない」の段階であっても、届け続ける意味はきっとある。
そこにかけてもいいのではないか。

人生は、何がきっかけで、いつどう変わっていくのか。
海の向こうの子どもたちのことだけではなく、
自分自身のことですら分かりません。

分からないからこそ、
たくさんの「かもしれない」に出会って、触れて、試して…
それが大切だと思うのです。

そんな「かもしれない」の種を、もっともっと生み出していきましょう。
そして、その「かもしれない」が将来どうなっていくのか、
ぜひ一緒に見届けてください。

世の中が変わっていくのは、
1人の100歩よりも、100人の1歩ずつが集まったとき。
僕はそう思っています。

そんな1歩ずつが集まることで、
一人が描ける理想の範囲を超えて、
「夢のまた夢」が現実になっていく。

ぜひ皆様の1歩ずつを、これからもこの活動に託してください。
僕自身も、自分にできる1歩をこれからも探し続けます。

どうもありがとうございました。

上村悠也