2025年2月22日、バングラデシュ・マイメンシン地方のネットロコナ県にあるガロ族の村で、移動映画館が実施されました。上映会が開かれたのは、村の一軒家の前に張ったカラフルなテントの下

1歳から15歳までの子どもたち20人ほどが集まり、最終的には約200名の人々が集うひとときとなりました。夜の静けさの中、月と蛍に照らされながら、小さな村に映画の光がともされました。

この日の映画配達を実現させてくれたのは、映画監督のモヒン・ラカイン(Mohin Rakhaine)さんです。

きっかけは、先日開催されたチッタゴン丘陵映画祭(Hill Film Festival)の閉会式で現在バングラデシュでRuwang Collective Artsとともに映画配達人を続けてくださっている原田夏美さん(ChotoBela works)が話した一言でした。

「子どもたちがもっと映画と出会える場が広がれば。」

映画祭の受賞者だったモヒン監督はこの言葉に共感し、またご自身も「この映画を撮影した村の人たちに届けたい」という思いを抱いていました。そのわずか数日後に原田さんたちのもとへ「一緒に届けに行きませんか?」という連絡をくれたのです。

(チッタゴン丘陵映画祭の授賞式でのモヒン監督(左)と原田さん(左から3人目))

村の空の下、映画館が生まれた夜

草, 屋外, 水, 川 が含まれている画像

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ガロ族が暮らす小さな村・チェンニがあるのは、バングラデシュ北部、インドとの国境近く。上映会当日、映画配達チームは深夜0時、首都ダッカを出発しました。途中様々なトラブルに遭いながら、一睡もできないまま夜明け前に目的地付近に到着。そこからさらにオートリキシャと徒歩で目的地に辿り着きました。

今回の映画配達人チームはこの上映会に、“REELS to ROOTS” というタイトルをつけ、遠隔地の少数民族の人々へ映画を届ける旅をしてくださいました。

傘の下にいる人

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作品は全部で6本。World Theater Projectから提供したアニメーション『FLY』のほか、モヒンさんらが用意してくれた5作品が並びました。その一つが、モヒンさんが監督を務め、この村で撮影された『A Snail Without Shell(原題:Bikinggri Etchaluk, 和訳:殻のないカタツムリ)』。村人自身が物語の登場人物としてスクリーンに登場しました。

上映場所となったのは、映画の出演者であるご夫婦のご自宅の敷地。そしてちょうどこの日は、主演を務めた夫のスビナト・マンキンさんの一周忌にあたる日でもありました。村の人たちと一緒に彼の姿が映る映画を観る時間。モヒン監督は「まるでそこに彼が、もう一度私たちと一緒にいるみたい」と感じたと言います。

夜が更けるにつれ、続々と人が集まってきました。スクリーンの前に敷物を敷くと、子どもたちはリラックスした様子で観はじめました。寝そべったり、お茶を飲みながら眺めたり。自分たちだけの映画館を、感動したり笑ったりして楽しんでくれました。

モヒン監督の想い

(移動映画館会場でのモヒン監督)

映画監督のモヒン・ラカインさんは、今回の上映をこう振り返っています。

「2月22日、私たちはチェンニ村で『A Snail Without Shell(殻のないカタツムリ)』を上映しました。ここは映画のロケ地でした。上映場所は、映画の重要な登場人物であるスビナト・マンキンさんとプロジュタ・ラクサムさんの家の庭です。まさにその人たちのために映画を上映できたことは、私にとって特別な経験でした。またその日はスビナト・マンキンさんの1周忌だったため、さらに意義深いものとなりました。

子どもたちからお年寄りまでが一緒に座り、興奮と好奇心に溢れ、その喜びに満ちた表情はこの体験をとても価値あるものにしてくれました。子どもたちはどのシーンにも笑ったり驚いたりして、お年寄りの方々は、物語に入り込むように、深く見つめていました。集まってくれたみなさんの存在が、この上映会をさらに生き生きとした、有意義なものにしてくれていました。

この村の人々からの愛と支えのおかげで、この上映会は忘れられないものとなりました。私は真の声をスクリーンに届けるために物語を作っているのだということを、思い出させてくれました。

チェンニ村の人々、主催者の皆様、そして私たちを支えてくださった映画製作者の皆様に心から感謝申し上げます。皆様の温かい励ましのおかげで、この経験は本当に特別なものとなりました。」

映画がつなぐ、こころと時間

カラフルなパラソル

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今回、日中は村の子どもたちを集めて青空お絵描き教室を開き、夕方から行う上映会を宣伝しました。終わる頃には国境をこえたインド側に住む同じ民族の方々も訪れて、結果的に200人ほどが集う大上映会となりました。たくさんの人たちが一緒に時間を過ごしてくれた今回の移動映画館でしたが、同行した原田さんはこんな気持ちを伝えてくれました。

「電気が通っている地域だったので美しい映像が上映できるUSHIOさんの大型のプロジェクター*1を運んで行ったのに、人数に対してスクリーンが小さく思い描いたような映写ができなかったのが心残りです。でも作品の質は素晴らしく、テレビや映画館でも出会えないような映画ばかりでした。また翌日は昨年10月に乾季に入って以来の雨となり、もし一日でも遅かったらこの上映は実現していなかったかもしれません。 とても“奇跡的な映画配達”でした。」

  1. USHIOさんの大型プロジェクター:World Theater Projectへの活動支援としてウシオ電機様よりご寄付いただいたものです。 ↩︎

上映終了は夜9時過ぎ。その直後には、スビナト・マンキンさんの一周忌をしのぶ祈りの踊りが始まったということです。

民衆, テーブル, 部屋, グループ が含まれている画像

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最後に

今回の映画配達が実現したのは、モヒン監督をはじめとする現地の仲間たちの力と、村の皆さんのあたたかな協力があってこそでした。

映画には人と人をつなぐ力があることを、改めて実感させてくれた機会となりました。バングラデシュでの移動映画館は、原田夏美さん(ChotoBela works)とRuwang Collective Artsのみなさんとの協力体制のもと、これからも続いていきます。

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映画配達人:
モヒン ラカイン(Mohin Rakhaine)監督
原田夏美(ChotoBela works
Ruwang Collective Arts(ルワン コレクティブ アーツ):
Manpachitra(マンパチットラ)

写真:
Humaira Snigdha, Natsumi Harada

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