こんにちは。World Theater Projectの薬師寺です。

さて、前回の記事に続きまして、カンボジアでのディズニー作品上映の様子についてお伝えいたします!

1300人を超えるカンボジアの子どもたちにディズニー作品を届けました!(前編)

とあるディズニー作品を観て思わず泣いてしまったスレイヤちゃん(小学校6年生12歳)。

主人公に感情移入し、思わず泣いてしまったそうです。

その作品は、『リトル・マーメイド』でした!

「主人公が、人間を好きになったことをお父さんに反対されて泣いてしまった場面を観て、悲しい気持ちになりました。」

アリエルのことを想って、インタビュー中にも涙が溢れてしまったようです。これほどまで深く物語に入り込んでくれたことに、私は泣きそうになりました。

(インタビューには素敵な笑顔で答えてくれていたのでご安心ください…。)

実は当初、私は『リトル・マーメイド』の上映に不安を覚えていました。

というのも、この『リトル・マーメイド』は私たちがほとんど上映したことがない実写の作品で、かつ他の作品よりも上映時間が長かった(140分!)からです。加えて慣れない字幕となると、最後まで集中できるだろうか、楽しんでもらえるだろうか、と気が気でありませんでした。

そんな私の予想に反して、スレイヤちゃんだけでなく他にもたくさんの子どもたちが『リトル・マーメイド』を楽しんでくれたようで、現地からの反響は想像を遥かに越えるものでした。

カンボジアの子どもたちからの『リトル・マーメイド』の人気ぶりを伝えてくれたのは、エリアマネージャーのサムナンです。

「これまでに上映したディズニー作品の中でも一番集中して観ていた。もう一度上映したい」というリクエストまで受けたのです。先生もトイレを我慢してまで真剣に観てくれたと言います。

こんなふうにリクエストがあったのは初めてで、本当に気に入ってもらえたのだと実感しました。

それではなぜ、『リトル・マーメイド』だったのでしょう。

実は私は、今回上映許諾をいただいた作品の中で子どもたちの反応が一番良いのは、口コミなどの評価が高い『マイ・エレメント』だろう、と上映前は思っていました。むしろ不安さえ感じていた『リトル・マーメイド』が、なぜ最も反響が大きかったのか。

サムナンと話しているうちにその理由が見えてきました。

シンプルなラブストーリーであること。

『リトル・マーメイド』は主人公の人魚アリエルと、人間の王子様エリックのラブストーリーです。もちろん様々な要素が合わさったストーリーではありますが、2人の愛を軸に物語が展開されます。

一方で、例えば、『リトル・マーメイド』の上映前は最も人気だった『バズ・ライトイヤー』は、宇宙を舞台とした壮大な物語。アクションシーンや主人公の相棒である猫型ロボットのコミカルな動きなどが子どもたちには人気でした。

しかし子どもたちは、「宇宙」に馴染みがなかったのです。よって、宇宙へ想像力を馳せるよりも、目に見える動きのおもしろさで楽しんでいました。

それに比べて『リトル・マーメイド』の舞台は海です。イメージが思い浮かぶ場所であり、そこで展開する普遍的な愛の物語は、想像力をも掻き立ててくれたのではないでしょうか。

それでは『マイ・エレメント』はどうでしょう。

この作品も、「火」の女の子エンバーと「水」の男の子ウェイドが友情を育み恋に落ちる、という点ではラブストーリーの要素を含みます。

異なるエレメント(元素)が結ばれることはタブーとされる世界で、まるでロミオとジュリエットのような”禁断の愛”を彷彿とさせる物語は、子どもたちに響かなかったのでしょうか?私の疑問に対するサムナンからの回答は至ってシンプルでした。

「人間じゃないから。」

なるほど、人間じゃないから感情移入しにくい、と。そう言われるとなんだか潔くて私はすっきりしてしまいました。それは『リトル・マーメイド』を子どもたちが気に入ってくれるのも納得だ、と。

(厳密に言えばアリエルは人ではなく人魚ですが…)

さて、子どもたちはアリエルとエリックのラブストーリーを楽しんでくれたようですが、写真を見ていると、少し照れくさそうにしている子どもたちが複数名いるのがわかりますでしょうか。

実は子どもたちの中には、最後のキスシーンは、顔を隠したり目を閉じたりと、恥ずかしくて見られなかった子もいるそうなんです。

というのも、サムナン情報によりますと、カンボジアのテレビではキスシーンを目にする機会は少ないとか…。子どもたちは見慣れないキスシーンに恥ずかしくなってしまったようですね。

確かにキスシーンが放送される日本でも人と一緒に見ていると気恥ずかしいので、子どもたちの反応はごく普通のことなのかもしれません。

それでは、『リトル・マーメイド』を観た現地からの感想を他にもいくつかご紹介したいと思います。

チェリくん 小学校6年生 12歳

「人は平等な権利を持っていて、自分の進路は自分自身で選べるというお話でした。」

知的なコメントを残してくれたチェリくん。将来の夢を聞いてみると、「まだ若いのでわからない」と落ち着いた回答が…!サッカーが好きだそうで、サッカー選手には興味があるそうです。いろいろな道を模索してほしいですね。

スレイサムロウン先生

「この映画は面白く、学びも多い物語でした。最後まで自分の夢を諦めない、ということを子どもたちに伝える映画だと思います。」

ハンダリくん 中学校2年生

「鳥や蟹がラップで歌っている場面が面白かったです。また、”愛すること”を観る人に伝える映画でした。」

まるで哲学者のような深い感想… 君は将来のフロムかもしれない、と思ったりしました。

「友達と一緒に映画を観ることができて、とても楽しかったです。」

そんな嬉しい感想を伝えてくれたのは、中学校3年生のマリサーちゃん。

マリサーちゃんと同様に『リトル・マーメイド』を観た子どもたちのうち、インタビューに答えてくれた4人には、ある共通点がありました。

「海に行ってみたい。」

全員揃って、「海に行ってみたい」と話してくれたのです。

彼らに『リトル・マーメイド』を届けたバッタンバン州の映画配達人、サロンさんに聞いてみると、彼らは海に行ったことがないそうです。本編の海中でのシーンを観て、海へと思いを馳せてくれたのでしょう。

知らないことへの興味や好奇心は、モチベーションを刺激するものだと思います。その時の気持ちを長く忘れずにいてほしいと願う一心です。

小学校の先生

「ほとんどの生徒たちは文字をあまり読むことができないため、映画を観てもただ映像を観るだけになってしまいます。生徒たちにはもっと文字を読めるようになってほしいです。」

子どもたちのことを思ってこのようなコメントが出てきました。それに対して、異なる学校ですが、とある女の子からはこのようなコメントが…。

フルミナちゃん 小学校6年生

「読む文字が多くてそれが面白かったです。」

字幕を読む、ということを楽しんでくれたようですね!そんなフルミナちゃんでも、理解できた字幕は40%くらいだそう。これを機に、クメール語の読み書きの勉強に対する意欲が増すと嬉しいです。

子どもたちにディズニー作品を楽しんでもらえたことは本当に喜ばしく、そして私たちにとっても貴重な経験となりました。今回の上映は、子どもたちに届ける映画について改めて考えるきっかけとなったからです。

今まで子どもたちが好きな映画は、短編あるいは中編(60分前後)で、アニメーションで、という風に考えていました。しかし、『リトル・マーメイド』の事例から、それは私たちが決めつけてしまっていたのだとわかりました。時間が長くても、実写でも、子どもたちに楽しんでもらえる作品はあるのです。

依然として子どもたちに映画を届けるまでの道のりは険しいままです。

選択肢は少ない上に作品を選ぶのも難しく、資金の問題も常にあり、そして日本とカンボジアという物理的な距離も壁となっています。

しかし今回無事ディズニー作品の上映を終えることができ、私たちとしても自信がついたように感じます。

上映実現のために陰で尽力してくださった配給会社のご担当者様は、私たちの想いを汲み取って終始寄り添ってくださいました。上映の報告をする度に喜んでくださり、温かい言葉をかけていただいたことで、どれほど励まされたか言葉に表しきれないほどです。

主に資金の問題からディズニー作品の継続的な上映は断念せざるを得ませんが、これからもより多くの作品を子どもたちに届けたいという想いに変わりはありません。

カンボジアだけでなくバングラデシュやザンビアにも活動が広がっていくなかで、どのような映画を子どもたちに届けるのか、現地の配達人と一緒に考えていきたいと思います。

最後になってしまいましたが、このように私たちが活動に邁進することができているのはWTPを信じ応援してくださっている皆様のご支援のおかげです。この場をお借りしてお礼をお伝えさせてください。いつも本当にありがとうございます。

これからも明るいニュースをお伝えできるよう尽力いたしますので、温かく見守っていただけますと幸いです。

長文に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

World Theater Project 薬師寺

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