カメラに出会った子ども達 in カンボジア

映像作家であり、ワールドシアタープロジェクトでもプロボノとして活躍している内田英恵さん。2017年12月に、かねてからの夢だった、途上国で子ども達と映画を制作するプロジェクトの第一歩を踏み出され、そのレポートが届きました。

 

もし遠い国や地域に住む子ども達が、一つの映像作品の中で共演するようなことができたら、また作品作りそのものを一緒に行うことができたら…
そうやって作品の中でつながることができたら、世界の子ども達が距離を越えてお互いの文化や環境を知り、もっと身近に感じられるのではないか。なかなか会えない親戚や引っ越してしまった友達を思うくらいの感覚で、行ったこともない土地に住む仲間を思えるのではないか。

映像は「目に見えるもの」と「聞こえるもの」を組み合わせて作品にします。映像はそこにあるものをそこにいない人に見せたり、物語や歌やダンスを表現したり、別の時間や別の場所で撮ったものを組み合わせたり、見る人に伝えたいこと語りかけたりすることができます。そんな映像作りを体験できる方法を考えたら、時空も越えていろんなことができるのではないか。

長らく胸のうちにあったそんな思いが、今回、カンボジアの子ども達との映像作り体験を行うことになったきっかけでした。

 

向かったのは、World Theater Projectの映画配達人サロンが拠点としているバッタンバン州。サロンは夕暮れ時になると、移動映画館のキットを地元の村の空き地に運んできます。映画上映用の大きなスピーカーから音楽が流れ始めると(子ども達は爆音ノリノリのダンスミュージックにお熱)近所の子ども達が集まってきて、慣れた様子で上映の準備を手伝います。ちっちゃい子たちは流れる音楽に大人顔負けのダンスに夢中で、その横をニワトリやガチョウの家族が散歩しています。今ではこれが、この村のおなじみの風景となりました。

 

でもこの日は、いつもと違うことが始まろうとしていました。

いつものようにゴザに座った子ども達がまず見たのは、World Theater Projectのメンバーで作った「Movie is Magic」という動画です。

カメラって何?撮影するってどういうこと?という内容から、映像を作ることはマジックみたいに、いろんな工夫をして見る人を楽しませることができるんだということを、私たちなりに詰め込んだ映像です。そしてこのワークショップに協力してくれたのは、カンボジアの映像業界で活躍する若手クリエイター、Sokharo Hangさん。

 

実際のカメラを触る前に、指で作った四角い窓をカメラのファインダーに見立てて構図作りやカメラワークの練習をしたり、目をつぶって耳に手を当て、身の回りにある音に耳をすませたりしました。

「聞こえる中で一番小さな音は何?」という質問に手を上げてくれた女の子の答えは「風の音!」

この答えにまず驚いたのは、映画配達人でした。「思いもよらなかった。映画を作るって面白い。」と言ってくれました。

放課後の夕暮れ時から始まった映像作り体験。日没をタイムリミットにいよいよ子ども達がカメラを手にすると、その表情からは笑顔が消え、みるみる真剣な目つきへと変化していきました。

今回使える時間は夕方の2日間。翌日も爆音ミュージックが空間を揺らす夕暮れの空き地で、子ども達は、来るやいなや撮って撮って撮りまくりました。映画上映の準備をする配達人達、セクシーダンスを披露するちびっ子たち、そして別のカメラで撮影する友達たち…。

 

今、「実際に体験すること」から学んでいくという学習方法も注目を集めています。「作品作り」への道は今後への宿題となりましたが、子ども達がファインダーを覗く真剣な表情、カメラに面白いものを捉えようとする熱、実際に記録された、彼らでしか撮ることのできない風景を目にし、このプロジェクトの大きな大きな可能性を感じずにはいられませんでした。

先日World Theater Projectの感謝祭にて、子ども達が撮った映像を上映しました。お母さんと一緒に参加し、その映像を見てくれた女の子が、犬と少年のペアダンスのシーンを気に入ってくれたということを耳にしました。もしその女の子にも仲良しの犬がいて、ペアダンスを撮影してカンボジアの子ども達と映像の中で共演できたら…日本の子ども達の放課後の遊び方を、また違う国の子ども達に紹介したら…同じ曲にのせてそれぞれが自分たちなりに演奏風景を再現してみたら…。

 

そんな風につながっていくかもしれない映像の共同制作が、子ども達が遠くの知らない世界を知り、それが知らない世界であっても実は繋がっている一つの世界であることを実感できるきっかけになれたらいいな、と思っています。またモノを作る楽しみ、作った達成感や自信、そんな内なる力の肥料になるのではないかと思っています。プロジェクトはまだまだトライアル中ではありますが、そんな思いをこめた取り組みを今後とも見守っていただけたら幸いです。

記事・写真:内田英恵