ロヒンギャの子どもたちと、完成作品上映会を新しいプロジェクターで

1つ前の記事の続きとなります。

20197月、コックスバザール県にあるロヒンギャ難民キャンプで行った、ロヒンギャ語吹き替え制作。8月4日、その完成上映会を同場所で行いました。そして、この度 USHIO電機(Dream Projection Project)様よりご提供いただいた新しいプロジェクターを初使用させていただきました。8月1日、チッタゴン丘陵地帯のランガマティ県で行った移動映画館の様子と合わせてお伝えしたいと思います。

(本記事は、ABROADERSで 9月30日に公開された同記事を若干再編集したものです。)

上映―「チョコパノサットロ!」

出来上がったロヒンギャ語版『ハルのふえ』の初上映は、もちろん、吹き替えに挑戦した子どもたちのいるアマデル・パッシャラで。

キャンプまでの渋滞も慣れたというか、道中バスに乗り込んで売り子が売ってくる「ピアンチュ」という名のおつまみをお決まりで食べたり、吹き替えメイキングシーンを回想したり、さて次は何をしようかと考えながらキャンプへ向かいました。また、この日は上映のための発電機(ジェネレーター)を、途中ウキヤの町でレンタルしました。

キャンプに着くと、驚いたことに子どもたち数人がキャンプゲートで私たちを待っていて(学校とゲートは歩いて5分くらい)、会って早々「チョコパノサットロ!」と叫んできました。それは、物語に登場する音楽の神様(フルートの名手)がチョコパンというキャラクター名なのですが、その「チョコパンの生徒」という意味で、その通りの台詞が数回あったことから子どもたちが気に入ってしまったみたいなのでした。というか、そのチョコパンの生徒役の声をあてたのもこの子たちだったので、お前らがチョコパノサットロだよ!とつっ込み返してしまいました。男の子は「僕が持つ!」と言って、私の肩からスクリーン(青いバッグ)を取り、坂道を足早に、一緒に学校へ向かいました。

上映 新しいプロジェクター

お菓子を配って、少しでもより映画館気分に。

そして、ロヒンギャ語版初上映は日本のUSHIO電機さん(Dream Projection Project)が提供してくださった素晴らしいプロジェクターを使用して行いました。

昨年運動会を行なった空き地は、支援物資や新たな建設の資材が積み上げられていて使えず、上映は小さな教室で行うことに…入口には他の学校や近所の子どもたちも集まりましたが、入りきれず、外から竹の壁の網目を通して覗き観ていた子もいました。

今後は月一、キャンプ内で移動映画館をできたらと思っています。

ロヒンギャ難民キャンプでの移動映画館は、昨年12月ぶりの2回目です。前回は、小さく薄明るい光の映写で、しかもそのために窓を塞いで酷暑のシアター環境となり、こちらとしてはやりきれない気持ちでした。それでも喜んでくれる子どもたちはいたけれど、途上国とか農村部とか、電気が通っていないことを言い訳にするのは悔しい…本当に良いシアター環境をつくって、純粋に映画を楽しんでほしいから、そこへまた一歩近付かせてくれた USHIO電機さんや WTPに今一度感謝したいです。いつかは、小さな映画館をチッタゴン丘陵地帯に建てたり、オリジナルCNGでバングラデシュを巡れるような移動映画館をやってみたい……

とにかく、今は暮らしや地域を制限されているロヒンギャの人々にとって、映画が少しでも世界へ繋がる窓になればと願います。

子どもたちと一緒にものづくりすること

できあがった映画を観て、声を当てた子たちは照れたり、口を開けて直視したり、周りの子は拍手して笑ったり、試写会に近いような状態でした。その様子を見つめていて思ったのが、「あれ?今日の上映がというより、制作期間ももしかして面白かった?」ということ。

バングラデシュで ChotoBela works の活動を展開してきて、その団体名通り、子ども時代を少しでも豊かにするために(こちらが)作業してきたけれど、子どもたちは決して無力な存在じゃなく、受け身的に物をもらいたいんでもなく、本当は、自分で創造したり、経験したいのだと感じました。これからは、機会を提供して、任せたり、一緒に作り上げることをもっとしていきたいと思います!

たとえ難民キャンプだったとしても、宝物にできる子ども時代を…それぞれの故郷に帰っても、思い出せますように。

今回の終わりに。難民キャンプは、ロヒンギャの人々のためにも、この場所に本来生息していた動物(象)たちや自然環境(木々の伐採)のためにも、もう広がってはほしくない…けれど、彼らがここで生きなければならない以上、私たちができる分野と方法で、応援し続けていきたいです。

ランガマティ県の2校を通して反省すること

8月1日、ランガマティの2校で、『ハルのふえ』のベンガル語(国語)版を上映しました。

この日使い始めた新しいプロジェクターは、ジェネレーター(発電機)が必要で、バングラデシュ支部にとっては初めてレンタルすることとなったのですが、現地のジェネレーターが、まさかこんなにうるさいものとは知らず…より良い移動映画館を目指して、次なる課題が生まれました。

それともう一つ初経験したのが、移動映画館を一年以上やっていて、上映を途中(3分の2程度)で終えざるを得なかったことです。許可を得て訪問したにも関わらず、校長が突然「映画より勉強だ!」と言い、子どもたちは映写が途絶えたスクリーンの前に座ったまま「カトゥーンもう終わったの?」と聞きました。

この国の暗記式な勉強スタイルや進学の難しさも知っているし、「また来るね」と返事をしたけれど、あらためて残念な点だと思いました。途上国でいつも問題に感じるのは、子どもたちというより、良質な教育や教師、親世代の理解の欠如です。

それから、ランガマティ(チッタゴン丘陵地帯)に関して、バングラデシュの少数民族 / 先住民族が多く暮らす地域であるため、チャクマ語(少数民族のいち言語)で制作した作品を優先して上映していきたいところですが、現状、少数民族だけという学校が少なくなっているのや、たとえ生徒の半数以上が少数民族でも、結局は全員のために国語で上映することになりがちなのが、少し残念です。

他に、途上国(バングラデシュ)では電気も水道も未だ設備が整わないにも関わらず、最近はネットと携帯電話が異常に普及しているのが事実です。小さな携帯画面で、自分の好きに動画鑑賞やゲームなどできる環境がありふれても、忘れてほしくないのは、大勢でひとつを分かち合う楽しさや大切さです。そういう機会を、移動映画館やその他のプロジェクトなどでもつくっていきたいと思います。