ウクライナの子ども達にできること

写真:藤田泉さん(SLOWART)

まだ冬の寒さが続いていた2月24日、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始し、そのニュースは私たちに衝撃を与えました。このような非常事態の中で一体私たちに何ができるのか。戦禍の子ども達を支えるために映画が担える役割はあるのだろうか。私たちは、世界中の全ての子ども達に映画体験を届けたいと2012年より活動を続けて参りましたが、戦禍の中にいる子ども達への映画配達は経験がありませんでした。まだまだ手探りの中ではありますが、これまでの生活が一変してしまったり、家族や友達や、生まれ育った場所から引き離されてしまった状況にあるウクライナの子ども達を思い、行ってきた活動につきましてご報告いたします。

まず私たちを勇気づけたのは、ポーランドの2人のアニメーション監督が立ち上げた子ども達向けの映画上映プロジェクトとの出会いでした。Border Crossing – Children’s Film Festivalと名付けられたその活動は、子ども達にひとときの楽しみを、保護者たちに休息を、というメッセージと共に国境近くのシェルターなどから活動を始めていました。主催者とコンタクトが取れた時、お互いに活動理念や映画の力を信じる気持ちに共感し合うことができました。ヒアリングをした上で私たちが提供をお約束したのは、45分の上映プログラムと簡単に持ち運びができる上映機材のキットです。45分プログラムはDigicon6 ASIA様のご協力のもと、日本、韓国、香港からのセリフの無い短編アニメーション8本をまとめたオリジナルプログラムになっています。そのうちの1本は権利フリー作品として弊団体が製作いたしました「映画の妖精 フィルとムー」です。


私たちが出会えたもう一つの支援活動は、ポーランドの手工芸品を日本に紹介する活動を続けてきたSLOWARTの藤田泉さんが立ち上げたものです。現在はウクライナの伝統文化も積極的に発信されています。実は最初の映画配達は、Border Crossing – Children’s Film Festivalによる上映の機会が訪れる前に、藤田さんによって実現いたしました。ウクライナやポーランドの子供の日である6月1日に、ウクライナからの避難民の子ども達のために開かれたイベントの中にシアタールームが設置され、現地の大学の日本語学部に在籍するウクライナ人学生が司会を務めて場を盛り上げてくれたそうです。子ども達は最後まで集中して映画を楽しんでくれたとのことでした。

                              写真:藤田泉さん(SLOWART)

会場となったのは地元トルンの街の小学校で、イベントはこちらの小学校の教職員が中心に立ち上げられた活動団体Fort1が主催したものです。ウクライナの料理やケーキが何種類も並び、様々な遊びも用意されていました。藤田さんはくじ引きの景品として、冬の身支度で避難してきた子ども達が夏の靴を買えるよう、靴屋さんで使える引換券もご用意されていました。

家族や友達と離れ安否を案じ、いつ終わるとも分からない戦争の恐怖、知らない土地での暮らし。そのストレスは計り知れません。またこの地での暮らしが長期に及ぶかもしれない現実に向き合っていくためにも、地元からの情報提供や人々同士の交流ができる場や機会の必要性は高まってきます。映画が担える役割は「人が集う場を作る」ことにもあると、私たちは今、考えています。しかしまだまだ私たちには、こうした状況の中映画配達をするための仕組み作りができておりません。映画配達には現地で実際に上映準備や対応をしてくださる団体や個人の方のご協力が必要不可欠なため、さらなるつながりの構築やスムーズに連携できる体制を整えていくことが課題となっています。
この報告をお読みいただきました皆さまに心から感謝申し上げますと共に、ウクライナ国内や避難先となっている近隣諸国や地域の状況に詳しい方、現地で展開されている支援活動とのつながりをお持ちの方、ウクライナの子ども達に届けるオススメの作品がある方や、新しい映画配達方法を思いついた方…、ぜひ皆様からアドバイスやアイディアをお寄せいただけましたら嬉しく思います。
まだまだ避難生活は終わりません。
現地の声に耳を澄ませながら引き続き取り組んで参りたいと思います。

Border Crossing – Children’s Film Festival (Facebookページ)
https://www.facebook.com/BorderCrossingFilmFest

SLOWART(ウクライナ支援特設ページ)
https://www.slow-art.pl/ukraine

NPO法人World Theater Project 内田英恵