「日本から世界レベルの映画を生み出すプラットフォームを創りたい」Tokyo New Cinema代表・木ノ内輝さん|映画人インタビュー第3弾

こんにちは、World Theater Project広報担当の岩井です。様々な形で映画活動に邁進されている”映画人”にお話を聞きに行くインタビュー企画。今回は、Tokyo New Cinema代表、木ノ内輝さんです!

木ノ内 輝(きのうち・ひかる)
株式会社 Tokyo New Cinema代表取締役。北海道生まれ、東京都町田育ち。ハーバード大学研究室在籍中にプロデューサーを務めた『Calling』がボストン国際映画祭にて最優秀撮影賞を受賞。帰国後、製作総指揮を務めた『愛の小さな歴史』が第27回東京国際映画祭にて入選、続けて『走れ、絶望に追いつかれない速さで』が史上初の2年連続入選を飾る。医学・芸術を含む多彩なバックグランドからの起業と展開によりHUFFPOSTにて「映画界のテスラ」と期待される。

株式会社Tokyo New Cinema:http://tokyonewcinema.com/
「世界品質を東京から」をミッションに、映像製作、映画配給を行っている。最新作『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(監督・脚本:中川龍太郎)のDVDが現在絶賛販売中&レンタル開始。

Tokyo New Cinemaを立ち上げる前はハーバード大学研究室で医学を研究されていた木ノ内さん。医学という全くの異業種から映画の世界に飛び込まれた背景やTokyo New Cinemaでの活動、そして映画界で成し遂げたい展望についてじっくりお伺いしました!

なぜ医学から映画に?

大学では医療を研究されていたとのことですが、映画と関わりはいつからですか?

子どもの頃から、芸術そのものが好きでした。映画も芸術の一つとして好きでしたし、よく観ていましたね。その中でもフィルム写真が好きで、大学では生物学と写真の2つを専攻していました。その後生物学を極めるためにハーバード大学研究室で再生医療を目的とした免疫染色について研究をしていました。免疫染色を選んだのは、染色技術が写真のフィルムの染色技術と共通するところがあり興味を持ったからです。ただ、研究室に入ってからも医療にだけ傾倒していたわけではなく、子どものころから好きな映画や写真といった芸術への熱も冷めませんでした。

医療と映画。一見全く違った世界に見えます…

医療と映画は、”人間に希望を与える”という共通点があると考えています。なので、大学で医療と芸術の2つを専攻したことは私にとっては自然なことでした。医療に関しては、研究室時代十分やりきったという手応えもあり、芸術の世界に飛び込んでみようと考えるようになりましたね。

ハーバード大学研究室在籍中に映画プロデューサーをされるきっかけは?

研究室在籍中に『Calling』という作品のにプロデューサーを務めました。監督の中川龍太郎が元々10年来の友人で、彼の才能をもっと世に広めたいと思ったのがきっかけです。映画界での経験はもちろんゼロだったので、やってみるしかないという想いで、海外の映画祭に出展したり出資を募ったり、できることはなんでもやりました。結果、ボストン国際映画祭にて最優秀撮影賞を受賞できたときは本当に嬉しかったですね。その後、2013年に拠点を日本に移し、Tokyo New Cinemaを設立しました。中川氏の二作目の作品『愛の小さな歴史』は東京国際映画祭での上映も果たすことができました。

映画監督の中川龍太郎さん。気さくに写真撮影に応じてくださいました!

国内での映画イベントにも積極的に参加されているようですね。

はい。今年の3月に「世界の窓、としての映画」トークショーに中川が参加しました。東京国際映画祭プログラミングディレクターである矢田部吉彦さんとトークセッションを行うイベントです。もともとは、黒澤明監督が「映画は世界の窓だ」と言っていたのですが、僕達もその考えに共感し、映画が文化を象徴するものだからこそ、世界に通用する作品を日本から出したいと思っています。トークセッションでは、映画だからこそ読み取れるその国の文化や、映画を通して発信されるべき日本文化について、じっくりと語り合うとてもおもしろいイベントとなりました。

 

木ノ内さんが考える日本映画界の課題と今後の展望

日本の映画界に対して感じている課題感はなんですか?

日本の映画業界全体でみると、映画人口や興行収入はここ数年ほぼ伸びていません。にも関わらず公開数は年々増えている状況です。つまり1つの映画での売上が下がっており、ヒットしている作品だけが観られる構造になっています。面白い作品が山のようにあるにも関わらず、ほとんどの作品は観られる機会も十分に持てず埋もれています。この状況がとてももったいないなと課題に感じていますね。

一方アメリカでは、映画のクラウドファンディングが活発です。また、常に世界に出すことを前提に製作されているので、日本の映画とは、そこの意識の差が大きいように感じます。映画の国フランスにおいては、映画税があったり、大手映画会社以外の映画製作者でも作品づくりができるよう、助成金制度が整っています。

いきなり日本政府に、映画への支援を求めることは難しいので(笑)、我々も新しいことにはとにかくチャレンジしようと、クラウドファンディングを過去数回実施しました。

クラウドファンディング成功の秘訣は?

もともと映画業界では新参者でしたから、逆にしがらみがなく思いっきりやれたというのがまず大きいです。また、クラウドファンディングの意義はただ金額面での寄付を集めるだけでなく、映画の広告宣伝の場にもなりますので、その点は十分に設計が必要だと考えます。あとは当たり前といえば当たり前ですが、海外含めて、映画やアート系におけるクラウドファンディングの成功と失敗要因をよく調査することも、とても重要だと感じています。海外での活動経験を活かし、現地のクラウドファンディングも実施しました。

今後の展望についてお聞かせください!

黒澤明監督じゃないですが、僕も「映画は世界の窓」だと考えているので、日本から世界に出せる作品をどんどん作っていきたいです。それを個別にやるのではなく、才能ある製作者が作品をより生み出しやすくするプラットフォームをつくりたいなと構想しています。

また、新しいテクノロジーを活用した映画製作も行っていきたいです。今の日本だと才能はあってもお金もない、スタッフもいない、ゆえに納得いく作品が作れないという、”産みの苦しみ以前の苦しみ”が蔓延していますが、そこをプラットフォームという仕組みと、AI等のテクノロジーで解決できたらと考えています。社会全体が急速に変化している世の中で、常に時代にベストマッチするような仕組みをつくっていきたいです。

失敗から学び成功を手に入れるやり方ももちろん大切ですが、今の日本の映画業界では、より多くの成功体験を積むことが大事なんじゃないか。そう考えます。

Tokyo New Cinemaさんのオフィスにお邪魔しました。和気あいあいとしつつ皆様ものすごい集中力で映画を製作されていました!

映画のプラットフォーム…わくわくします!最後に木ノ内さんが思う「映画の力」とは?

映画は文化だと思いますし、それ以前に、人に希望を与える力があると信じています。音楽や絵画など別の芸術でもその力はあると思いますが、映画は与える情報量が多いですし、国を超えて発信できるものです。そんな力をもっている映画に惹かれて、僕は医療の道から映画に飛び込んだわけです。これからも、常に未来を見据えて、映画に新しい風を少しでも呼び込んでいけるよう、活動していきたいです。

最後にTokyo New Cinemaの皆様を撮らせていただきました!次回作品も楽しみにしています!

 

記事担当

岩井 由生(いわい・ゆう)
1989年生まれ。大阪府出身。早稲田大学文化構想学部卒業。現在社会人5年目で、リクルートコミュニケーションズに勤務。地方自治体や事業会社のプロモーションプランニング、制作ディレクションを担当。ワールドシアタープロジェクトでは広報を務めている。