「上映するだけが映画じゃない」キノ・イグルー有坂塁さんが考える映画の可能性とは?|映画人インタビュー第5弾

キノ・イグルーの始まり

実は最初から移動映画館をやろうと思っていたわけではないんです。

1920年代のフランスで盛り上がっていた上映会「シネクラブ」という文化に憧れがあって、人の数だけシネクラブが存在している。そんな時代だったんです。

昔から何かを作ってというのは得意ではなく、
今あるものを使って、違った価値で届けていくのが好きでした。

音楽でいうとDJとか、そういうのが羨ましかったんです。
それができるのがシネクラブだと思っていました。

2003年に友達が東京の外れに小さな映画館をオープンして、その時僕に声を掛けてくれて、同年5月に初めて上映会を実施しました。

それがキノ・イグルーの始まりです。

相手の良さや自分の良さを引き出すために重要なのはコミュニケーション

今までこちらから上映会させてくださいって営業したことはないんです。その代わり、声をかけてもらったら基本的に100%受けるようにしています。

酒蔵、博物館、無人島だったりのローカル線の終点のさらに奥にある村で上映したり、全てオーダーメイドで上映してきました。

性格的に営業はできないっていうタイプではあるんですけど、仮にそれをやっても、相手に合わせてしまい、相手の良さも自分の良さも潰し合っちゃうと思うんです。

僕の方法論をそのまま当てはめても面白くなるとは思っていないし、お互いに話して、出てきたアイディアの方が面白いんです。結局互いの良さが出せる環境を作れるかが大事で、重要なのはコミュニケーションなんですよね。

何かを選択するとき、
今までの経験というのも大事だけど、逆にそれが邪魔をするときもある。

でもやっぱり、昔はこだわりがありました。ただそれが凄くストレスになっていて、このままだとつまんない自分になってしまうんじゃないかって不安だったんです。

何かを選択するとき、今までの経験というのも大事だけど、逆にそれが邪魔をするときもあって、だからこそ、僕は自分の直感に頼ってきた感じはあります。

ちょっと話は変わるんですが、人は思ったことを言葉にしたがると思うんです。

誰かと思いを共有して安心したい。心の拠り所を作りたい。
そのために人は言語化する習慣が備わっていると思うんです。

でも直感はどうやっても言語化できない。

ただその言語化できない直感をヒントに選択していくことが、大事な時もあると思っていて、それこそが自分の好きな道を切り開くために必要なことだと思うんです。

映画を上映をするだけが映画の全てじゃない。

「あなたのために映画を選びます。」だったり、スターバックスさんとも新しい取り組みを始めました。

映画にはまだまだ色々な可能性があると思っています。飲み会で盛り上がったりするためのコミュニケーションツールだったり、辛い時に支えてくれるケアツールだったり、可能性は無限大だと思うんです。

僕も若い頃、引越しのバイトをしている時に、映画に助けられたことがあります。

その日はギラギラと日差しが照りつける真夏日で、一緒に作業する周りの人はみんな強面のお兄さんばかり……。今にも誰かがキレてしまいそうな、一触即発な雰囲気で……。

心が折れかかっていたんです。

でもその時イギリスのある映画を思い出しました。

その時の状況とその映画のシーンが似ていて、
「その世界に入り込んだんだ!」そう思うようにしてみたんです。

すると、一気に世界が変わったかのように楽しくなって、映画のワンシーンを思い出しただけでこんなにも変わるのかって思ったんですよね。

だからいっぱい映画を見ておくと、ふと助けてくれるものが増えたりもします。

映画の歴史は120年しかない

少し話が外れましたが、実は映画って120年の歴史しかないんです。120歳のおじいちゃんと同じって考えると、なんだかまだまだできることはたくさんあると思えますよね。

それに今、映画を上映する人が増えて来ていて、それぞれに個性があります。私たちの移動映画館も上映方法の一つでしかない。だからもっといろんな上映が生まれて、映画を見る人がどの上映かを選べるような、そんな仕組みになっていけばいいと思っています。

映画を通して、話す機会や考える機会を増やしていきたい

30歳、40歳になって、そのタイミングでみんなで集まって、
これまで積み上げて来た考えや価値観を壊す会を開きたいなって密かに思ってるんです。

年齢関係なく、常にみんな成長しなくてはいけない。じゃないと閉塞感が出てしまうと思うから。これは映画に必ずしも関係しているわけではないのですが、僕は映画が好きなので、映画通してそんなこともしていけたら楽しいだろうなって思っています。

これからもいろんな方とのご縁をいただき、様々な上映を行なっていくことになると思うのですが、とにかく、楽しい一秒を積み重ねていくことを忘れずに活動していきたいです。

記事作成者
有坂塁
移動映画館「キノ・イグルー」代表。フィンランド映画界の鬼才アキ・カウリスマキから直々に名付けられた「キノ・イグルー(kino iglu)」、日本語訳で「かまくら映画館」の意。2003年に中学校の同級生である渡辺順也とともに設立。映画館やカフェ、本屋、雑貨屋、学校など様々な空間で、世界各国の映画を上映。映画のイメージにあわせた、コース料理やデザート、ライブ、写真展、イラスト展なども開催し、作品から広がる世界を表現している。
▼キノ・イグルー
http://kinoiglu.com/
▼Instagram
https://www.instagram.com/kinoiglu/