途上国の映画作品をもっと世の中に広めたい!ミャンマー映画配給人・西川翔陽さん|映画人インタビュー第1弾

こんにちは、World Theater Project広報担当の岩井です。様々な形で映画活動に邁進されている”映画人”にお話を聞きに行くインタビュー企画。
第一弾は、ミャンマーNo.1のドキュメンタリー映画会社”Tagu Films”の国内配給を行う、”Tagu Films Japan”の代表、西川翔陽さんです!
   


西川翔陽(にしかわ・しょうよう)
早稲田大学商学部卒業後、2011年 ソニー株式会社入社。経営企画部、新規事業開発を行い、2017年退社。
現在はIT系ベンチャーと東京大学生産技術研究所で務めながら、ミャンマーNo.1のドキュメンタリー映画会社であるTagu Filmsの国内配給を行うTagu Films Japanの代表を行う。2011年世界経済フォーラム(通称:ダボス会議)のグローバルシェイパーズに選出。
Tagu Films Japan:https://www.facebook.com/TaguJapan/?ref=aymt_homepage_panel

ミャンマー映画に出会ったきっかけとは?

早速ですが、ミャンマー映画に関わるきっかけを教えてください。

2010年、当時大学生でした。東南アジアの若者の交流や教育を支援するNPO法人Learning Across Borders(以下、LAB)に関わっており、その現地視察としてミャンマーを訪れました。

当時のミャンマーは軍事政権下で、とにかく言論の自由がありませんでした。現地の学生と交流した際も、日中は自由な発言を避け、夜こっそりと本音を話すというような時代でした。その時はじめて、日本とは全く違う政権下に置かれているミャンマーの様子を肌で感じました。

ABの恩師Dwight Clark氏と初めてミャンマーに訪れた2010年

その後2015年、再びLABの社会人サポーターとしてミャンマーに訪れた際、ミャンマー映画界に革命を起こす、まるで坂本龍馬のような人物との出会いがありました。

<ミャンマー映画の歴史>
■1910年代:初めて映画が製作される。
■1920年:”Burma Film Presents: Love and Liquor” (邦訳:「ビルマ映画:愛と酒」)で国内プレミア上映が歴史上初めて行われ、10月13日はミャンマーの『映画の日』に。
■1950-60年:黄金期「アジアのハリウッド」と称されるほどに成長。
■1962年:クーデターが勃発し、軍事政権時代へ。映画館の国有化や検閲が厳しくなり、多様な映画制作が困難に。国内の映画館はどんどん減っていった。
■2010年代:民主化に移行後、徐々に多様な映画が製作されつつある。

参考:https://www.myanmar-news.asia/news_iWO2W1NTM.html

坂本龍馬!?2015年といえばミャンマーはすでに民主化された後ですよね。

はい。5年ぶりに訪れたミャンマーは極端に変わっていて、「文明開化とはこういうことか!」と驚きました。特に軍事政権化で萎縮していた人々に活気が戻っていたのが印象に残っています。

LABが支援していた、アメリカ留学を志願する学生が通う塾の学生が、視察先として卒業生が創設したTagu Filmsに連れて行ってくれました。
そこで出会ったのが、Tagu Films代表のLin Sun Oo(リン・ソン・ウー)でした。

初めてTagu Films(TF)に出会った2015年夏。左からTFカメラマン Khin Maung Kyaw氏, TF創業者兼監督 Lin Sun Oo氏, 西川さん、案内してくれた学生。

2016年夏の訪問時に、ヤンゴンの隣の貧困地域で子供と遊んでいる時の様子。

彼は、アメリカの大学を卒業後、ワシントンのシンクタンクに勤めていました。アメリカにいながら、祖国ミャンマーの政変を耳にし、帰国を決意。帰国後、自身が卒業した塾で講師をしていました。当時のミャンマーは民主化へと激変する真っ只中。講師をしながら、これから若者の選択肢が多様化していくであろう可能性を感じたと言います。
そこで、これからのミャンマーを担う若者の目標となるような映画を作りたいと思い、Tagu Filmsを創設しました。

Lin Sun Oo氏は、なぜ映画という手段を選んだのでしょうか?

実は彼、祖父と母が映画監督という三代の映画一家に生まれ育ちました。おじいさまは、ミャンマー映画黄金期の頃、ミャンマーのアカデミー賞を受賞されたようです。
アメリカで生活する中で入ってくるミャンマーの情報と現実にギャップがあると感じた彼は、リアルなミャンマーをストーリーテリングできないかと考え、映画という手段を選んだそうです。

彼の語りに感銘をうけ、思わず握手(笑)。

僕も、ミャンマーで感じたリアルを物語として伝えていくことに価値があると深く共感し、
その場で、日本での配給を実施することが決まりました。

Tagu Films(TF)のLamin Oo監督がNHKで取材を受けたときの様子。左から西川さん、NHK中西氏、TFのLamin Oo監督、TFの翻訳担当者の星野佐矢子さん。

Tagu Filmsメンバーは、ほとんど全員アメリカで勉強をしたあとミャンマーで活動しています。自分たちが教育によって意識や視座が変わったことを経験しているからこそ、今度は映画を通してミャンマーや外国の若い世代を変えていきたいと本気で思っています。
その一環として、Tagu Filmsで一定期間インターンした人に、映画監督を目指す支援をしていたり、文科省と直接キャンペーンを実施したりと、精力的に活動しています。

彼らと一緒にいると、歴史を変えている一部にいると感じ、とてもエキサイティングです。

https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/editors/1/20160629/
NHK World で取材された、Tagu FilmsのLamin Oo氏

Tagu Films Japanの活動について

日本ではどのような活動をされているのですか?

ミャンマー映画の映画館上映や、学校やレストラン、企業の研修などで上映イベントを実施しています。映画館上映は、昨年アップリンク渋谷やシネマ・ジャック&ベティ(横浜)で行いました。

定期開催している出張上映会は、学生代表をつとめる真島が担当しています。直近は今年2月、千葉のとある小学校で、『HOMEWORK』というショートムービーの上映会を行いました。この小学校では、毎年難民としてミャンマーから逃れて来た家族の子どもたちを受け入れていて、そういった子どもたちへの理解促進が目的でした。

Tagu Films Japan学生代表を務める真島里帆さん

https://www.youtube.com/watch?v=9eXyfl91Ud0
『HOMEWORK』(2014年/8分/ミャンマー/監督:ラーミン・ウー)
「しゃべっちゃ駄目!宿題やってるの──」娘から、パソコン越しに話しかける父への心無い声が響く。そんなやり取りを微笑ましく見守る母。娘と母、そして単身赴任の父、3者の家族愛を描く。

子どもたちの反応は?

8分という短さもあり、みな集中して楽しんでくれました。映画上映後、クラスにいるミャンマーの子どもたちがヒーローになったと、先生たちも喜んでくださっていました。

小学校での上映会の様子。

映画を通してマイノリティ理解が進むとは素敵な取り組みですね。
今後はどのような活動を予定しているのですか?

新作のお披露目会や、大規模な映画イベントを企画しています。また、ミャンマーの映画監督とその映画に関連する日本の専門家を呼んで、上映会&ワークショップも実施予定です。

「映画は平和への一歩」西川さんが考える映画の可能性

もともと映画はお好きだったのですか?

はい。映画がもともと大好きというのもあり、新卒でソニーに入社しました。
映画は、平和への第一歩だと思っています。平和構築に関して色々と勉強してきましたが、平和について真面目に議論するよりも、映画のようなエンタメに触れることで、相対的に憎しみ合う時間を減らしたほうが平和になるのではないかと考えています。

おすすめの映画を教えてください!

1985年に公開された『ビルマの竪琴』(監督:市川崑/主演:中井貴一)が好きです。
同じ年には、最近もヒットした「ゴジラ」も公開されましたが、それを上回るヒット作だったそうです。

第二次世界大戦のビルマ戦線で戦った日本兵の話で、ミャンマーの文化や、ミャンマー人の心の温かさ、また日本との関わりについて知ることができる映画です。
ミャンマー人ってどんな人?と、すぐに思い浮かばない方も多いかもしれませんが、この映画をみると、彼らのハートがとても豊かであることを感じられます。

『ビルマの竪琴』(1985年/日本/133分)
監督:市川崑
配給:東宝
製作:㈱フジテレビジョン、㈱博報堂、㈱キネマ東京
Copyright Ⓒ1985フジテレビジョン 博報堂 キネマ東京

途上国の才能ある映画監督作品をもっと世の中に広めたい

今後の展望を教えてください。

引き続き、Tagu Films作品を配給する最大限の道を探っていきたいです。異国の映画を観ることはただの娯楽ではなく、その国独自の”価値”を知ることができる手段だと考えています。

ミャンマーをはじめ、他途上国でも才能ある若い映画製作者が増えてきています。

彼らには、日本では絶対経験できないようなエクストリームな経験を持っているからこそ描ける作品があります。僕はそういう作品に心が動かされるので、もっと世の中に広めていきたいですね。埋もれている才能が世の中にでないことは焦燥感に駆られます。

最後にWorld Theater Projectに応援メッセージをお願いします!

子どもたちに、映画を観る喜びや感動といったエンタメの原体験を提供していることに、純粋に共感します。また、途上国で移動映画館をするって、一回のイベントではできるけれど、続けることはとても難しいと思います。でも継続してこそ意味があると思うので、引き続き応援しています!

記事担当

岩井 由生(いわい・ゆう)
1989年生まれ。大阪府出身。早稲田大学文化構想学部卒業。現在社会人5年目で、リクルートコミュニケーションズに勤務。地方自治体や事業会社のプロモーションプランニング、制作ディレクションを担当。ワールドシアタープロジェクトでは広報を務めている。